恋を知らなかった

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 今現在彼氏が居て熱愛中の萌花が言った。 「彼氏がいるって超いいよ。だから亜玖留もそろそろ恋をして彼氏を作りなって」  だけど亜玖留の周りに好きになれそうな男子が居ない。  ……特別理想が高い訳ではないが、恋という高度な感情は、しようと思って直ぐに出来るわけがない。  クラスメートに片思い中の瞳が言った。 「好きな人がいるって切ないよ。その相手が女子と話しているだけで辛くなったりもするし、勉強中でも好きな人の事ばかり考えちゃうし。でも、目が合っただけで嬉しかったりもするの」  受験生なんだから、勉強中は勉強に集中したい、と亜玖留は思った。  とある人気若手俳優の大ファンである明莉が言った。 「彼の活躍している姿を観ているだけで幸せだし、元気を貰ってる。身近じゃなくても芸能人とかでも好きな人いないの?応援するのも楽しいよ」  テレビとかに出る人を見て、格好いいな、とか凄いな、とは思うがそれ以上の感情は抱けなかった。  亜玖留は自分とは違いすぎる彼等には親近感は抱けなく、それ故にのめり込む事も無かった。  アニメオタクでアニメのキャラクターに恋い焦がれてる美咲が言った。 「現実の男なんて所詮奇麗事とか言ってても腹黒かったり何か企んでいたり騙していたり浮気したり見下したりしたり!心の中は汚かったりするよね。仕方が無いよ人間だもん。完璧な奇麗な男なんか居ないよ。  でもアニメキャラだったら超絶美少年なのに性格まで良かったり。二次元上等!二次元万歳!現実に恋愛なんて求めなくても二次元でキャラにときめいたり、しない?」  亜玖留は漫画もアニメも好きだしキャラクターに好感を持つことはあるけど、美咲ほどのめり込んだりはしなかった。  失恋した志織が言った。 「まじ辛いしまじ悲しい。もう、彼の事憎いんだかまだ好きなんだか分からない。心がグチャグチャだよ」  泣く志織を宥めながら、『やっぱり恋なんかしなくていいや』と亜玖留は思った。  だけど、誰かを本気で想って泣く志織が羨ましくもあった。
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