恋を知らなかった

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 亜玖留自身、自分が異常だと思った。  故に想いが恋だというのを否定した。  殺人者に惚れるなんて、おかしい。  第一、被害者と遺族に失礼だ。  でも……殺人の行為に惹かれた訳ではない。  殺人は……殺人じゃなくても犯罪は駄目、絶対に。  この想いを友人に相談なんか出来なかった。  相談したら異端な目で見られるだろう。変に思われるし、下手したらクラスメートに言い触らされて異常者扱いを受けるかも知れない。  親にだって相談なんか出来ない。  普通の恋だって、思春期の女子が恋心を親に相談するのは少ないだろう。  亜玖留の場合は相手が今話題の殺人者だ。  相談したら親を悲しませてしまいそうで、出来なかった。  自分の想いに悩んだ。  悩めば悩む程、想いが強くなっていく気がした。  三日後、亜玖留はスマートフォンを使い、ネット掲示板でこの想いを相談することにした。 『初めまして。私は今中学三年生の女子です。  私は今まで恋をした事がありませんでした。しかし、今、ある犯罪者が気になるようになりました。その人はイケメンではないしぶっさいオッサンだし、何より殺人者です。  なのに何故か気になって仕方がありません。考えるとドキドキします。  コレって恋なんでしょうか?』  ネット経由で匿名性があっても、相談するのに戸惑い緊張して鼓動が高鳴った。  そして真っ先に来た返答が 『中二病www』  この全く参考にならない只の侮辱の言葉に苛つく。 「中二病?私は中学三年生つっただろ」  怒りの独り言を呟く。  その後も参考にならない回答が続く。夏休み故か退屈な学生がつまらない回答をしていたり荒らしをしているのだろう。  そんな中、亜玖留の気をひく回答があった。 『今、中学三年生なんですね。あなたの今の想いは思春期がもたらす気の迷いかもしれませんね。  殺人者なんて私達からすれば遠い存在ですよね?異端ですよね?その、自分には無い異端さに惹きつけられたのではないのでしょうか?  よく考えてみて下さい。  恋をしたなら、その相手に触れたくなる、キスしたくなったりします。  あなたはその殺人者に会いたいですか?触れたいですか?キスしたいですか?  嫌だったら、あなたの想いは気の迷いです。  嫌でないなら……恋かもしれませんね』
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