眠りの番人

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アメリと少年に温かい紅茶のカップを手渡しながら、番人がこっそり言いました。もっとも少年へは、その動かない指にカップの持ち手を引っかけただけですが。 「お父さんが心配かね」 ふいに番人が問いかけました。アメリは驚きました。 「夜明けに羊を数えているとね、いつもちょうど52万5600匹目に鳩が飛ぶんじゃ。わしと羊のうえを、つつーっとね」 番人は指で空に弧を描きました。見上げるその目は、とても綺麗でした。 「そうして君の窓へ入っていく。わしはそれを見ると、君と君のお父さんのことや、君のお母さんとの日々を思うんじゃ。そしてとても幸せな気持ちになって、羊を数えるのをちょっと休憩するんじゃよ、毎朝ね」 綺麗な眼差しは地上に戻り、今は優しくアメリに注がれています。 「それが近ごろ鳩を見ないんじゃ。わしはいつ休憩すればよいのかわからなくてね」 アメリはつられて少し笑ってしまいました。長い間、笑っていなかったような気がしました。 「アメリ、冒険家にとって一週間とは、とても短いことがある。忙しく厳しい仕事だからね。手紙に使う紙やインクを切らすことだってある。だから君の心がつまるほど心配するのは、まだ早いと、わしは思うよ」 番人の眼差しに、アメリは頷きました。     
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