アメリの憂鬱

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「そうね、でもパパに何かあったのなら私は助けに行く。鳩が来ないのは、おかしいわ」 おばさんは頷いて少し考えました。 「ねぇアメリ、こうも思えるわ。困っているのはあなたのパパじゃなくて、その鳩かもしれない。何か鳩が、飛べない状況にあるの。例えば、雷とか吹雪とか、郵便係を定年退職したとか」 「鳩が?」 「鳩に聞いてみれば良いわ。鳩と話せる薬の作り方を教えてくれるように、うちの旦那に聞いてみましょう。ちょうど昨日手紙が来たばかりだから、すぐにお返しの手紙に書くわ。鳩を呼んでちょうだい」 おばさんは嬉々としてペンを取りました。 「チェルシーおばさん、鳩は飛んでいるのね」 おばさんはハッとしてアメリを見ました。ようやく鳩が元気に飛んでいることを思い出したのです。 「困っているのは、やっぱりパパなのよ」 少し取り戻しかけていた元気をすべて投げ出して、アメリはテーブルに俯きました。とろんとしていたメリンダが、アメリの落胆に目を覚まして叫びました。 「そんなに思い悩んじゃダメよあなたみたいにかわいい人は〈鏡面にしか現れない種類の魔女〉の恰好の標的!」 「〈鏡面にしか現れない種類の魔女〉!」 チェルシーおばさんも叫んだので、アメリは落胆を忘れて驚きました。     
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