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「お…男…」
呆然としながら自然と口から零れ落ちた声は、それはそれは絶望に染まっていた。
愕然と目を見開きその姿が見えなくなっても、“彼”が歩いて行った方向を見つめてしまう。
そういえば、“彼”と会話しているとき、女の子と話すよりずいぶん視線は高いところにあった。
そもそも女の子と話す経験があまりないので気付くことが出来なかったが、巨躯の映一が少し視線を下げるだけでいいとなると、百七十センチは越えているに決まっている。これが女の子相手だと、視線合わせるにも屈まなければいけないことも多かった。
加えて、言われてみればふつうに声も男性だったように思う。
あまりに舞い上がっていて、全然気づかなかったけれど――というか。
「俺、なにしてんだ!?」
ふだんはたいそれたことが出来る性格でもないくせに。まさか、「大好きなアニメキャラに似ている男性」を見つけて暴走してしまうとは、夢にも思わなかった。
「これからは、気を引き締めてきちんとしなきゃ…」
そう言い拳を握りしめた映一。
この決意はこの先まったくの無駄になってしまうことを、映一はまだ知らなかった。
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