22人が本棚に入れています
本棚に追加
「ところで小樽は近いの?」小池は運転している私の横顔に質問しました。
「近いよ。札幌の隣り町」
「隣りと言っても、北海道と東京では距離感が違うだろ」
「いや本当に近いよ。車で1時間も掛からないんじゃないかな」
「車で1時間を近いと思えるようになったら、お前は立派な北海道民だよ」
「そうか?」
私はお気に入りの音楽をかけ、積もる話に花を咲かせていました。
「こっちに来ても相変わらず心霊スポットとか巡ってんの?」と小池。
「もちろんだ。サークルも作ったよ」
「よくやるわ。メンバーに女の子いる?」
「心霊スポットじゃなくてパワースポットと言うようにしたら急に増えた」
「まあ、似たようなもんだしな。北海道は歴史が浅いから心霊スポットとか少ないんじゃないの?」
「そう思うだろ? ところが違うんだ。東京は土地が限られているから古い建物は取り壊して、すぐに新しい建物が建つだろ。でもこっちは土地が余ってるからさ、廃墟は廃墟のままさ。わざわざ古い建物を壊して新しいのを建てるくらいなら、他の土地に建てたほうが安くて早いってわけ。だからイキのいい心霊スポットがたくさんあるんだ」
「なるほどね」
「今から行く小樽にも、素晴らしいスポットがあるよ」
「何ていう場所?」小池は半笑いで訊いてきました。高校時代に一緒に心霊スポットを探索していた時みたいな無邪気さは薄れていました。
「オタモイだ」
「オタモイ? 変わった名前だな」
「小樽を代表する心霊スポットだよ」
「・・・・・・どうせ断っても、そこに行くんだろ?」
「うん。でも先に寄りたい所がいくつかある」
私は結局、カーナビに目的地を登録することにしました。
行き先は『手宮(てみや)洞窟』です。
最初のコメントを投稿しよう!