転生と日常と

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転生と日常と

1 今日も朝から多種多様な音が響き渡っていた。ピアノ、ヴァイオリン、フルート、チェロ、コントラバス、オーボエーーまだ全然覚えきれていないが、ありとあらゆる楽器の音色が、だ。 澄み渡った晴天の下、虫一匹いなそうなほど綺麗に刈られた青々しい芝生を抜け、赤レンガで統一された重厚な二階建ての校舎に入ると、その音は一段と大きくなった。 「酷いわね。これでは、まるで騒音じゃない」 両手で耳を包み込むように押さえながら呟いたカロリナは、同意を求めるように僕の顔をちらりと見た。 僕は首を横に振った。 「確かに不協和音も混ざっているように思いますが、僕もこの程度ですので」 「それもそうね」 カロリナはわざとらしいくらい大きく溜め息を吐いた。 「このカールステッド家長女であり宮廷専属ピアノ奏者の私が直々に指導しているのに、どうして貴方は一向に上達しないのかしら」 「面目ない限りで」 僕も目を瞑ってわざとらしい溜め息を吐いてみる。 「なによ。本心からそう思ってる?」     
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