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そう言って髪に手を伸ばすが、その手が払い除けられてしまった。
「いらねぇーよ。知ってるだろ? 俺の髪を触っていいのは美女だけだ。しかも飛びきりの」
「もちろんだ。冗談だよ、ただの」
エドは口角を上げてニヤリとした。そのやり取りを見ていたマリーも心なしか嬉しそうになっているような気がする。
「えーそれでは、これからカロリーナ・カールステッド様の実演をはじめーー」
リーマン学校長のぼそぼそと聞き取り辛いあいさつが始まった。
「あっ、ほら始まるぞ。席に行こうぜ」
背中を押されて中へ入り、一番後ろの席に3人まとめて座ると同時に綺麗に磨かれた漆黒のグランドピアノにカロリナが十指を並べた。
全員の視線がカロリナの白く細長い指先へと集中し、会場全体が息を呑むような緊張感で張り詰めるーー長い一拍ののち、音が弾けた。
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