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『ようこそ、長崎県海光島へ』
制服の行列の脇には横断幕があった。
島民の皆さんが気のいい笑顔で出迎えてくれていた。
島の雰囲気やお迎えの皆さんの年齢層の高さもあってか、なんだか祖父母の家に来たような安心感と微妙な緊張感を感じる。
とりあえず、船酔いのいまできる精一杯の笑みと会釈で過ぎていった。
反対側では、ゆらりゆらりと船が波に揺すられていた。
自分に初めての船酔いをプレゼントしてくれた船だ。
耳には絶え間なく海鳥の鳴声と波音が響いていた。
船体に当たって弾ける丸く乾いた波音が次第に抜けていくと船の姿は途切れた。
藍と緑が入り混じった海が、空のてっぺんにある太陽から親の敵のように光の塊をぶちまけられてギラギラと輝いていた。
その海の一番遠くの先には、山の稜線が切り絵みたいに貼り付いていて、その下にはうっすらと出港した港が望めた。
この船の旅は20分だった。
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