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翌朝ユキは急いで船の片づけをしている泉の畔に向かった。
選手たちが小舟を馬車に詰め込んでいる。
紫の小舟が見えると、側にダーシンの姿があった。
「ダーシン。昨日は、ごめんなさい。急に、笑ったりして。失礼だったよね。あの、私、藤城雪です。よろしく……」
ユキが早口で言葉を吐き出した。
走ってきたものだから、息を切らしている。
「いえ。何も気にせんで下さい。それより落ち着いて。息切れてますやん」
プッとダーシンは吹き出した。
「……思てたんとちゃいますね。なんや『女神様』言うから、ツンとしてすました人、想像してましたけど、普通の女の子ですね。隊の奴らが可愛らしい人や言うてましたけど、わかりますわ」
あけっぴろげに褒められてユキの顔が赤くなる。
ダーシンがそんなユキを見て、赤面した。
「ちゃいますよ! 何か変な事言いましたね。すんません」
ダーシンがポリポリと頭を掻いた。
「昨日俺、何か変な事言いました? なんや失礼な事言うたんやないかと逆に気になって……」
「違うのよ。本当に失礼な事してごめんなさい。ダーシンは何も悪くないの。ダーシンのその……方言がね、私の国にある方言と全く一緒なのよ。それで……まあいろいろ思い出したら可笑しくて」
ユキは姉に何度も会いに行った大阪について、どんな所なのかダーシンに話した。
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