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「それで私、お笑い番組も好きでよく見るんだよね」
「バングミですか?」
「えっとねえ。テレビ…………劇場で芸人さんが、面白い事しゃべるのよ。それが好きでね。まあ、生では見てないんだけどね」
「芸人さんがおもろい劇やるっちゅうことですか?」
「うん。そう、そうそんな感じ。それが大好きなんだよね」
「若い女の子やと、今ハヤリの芝居なんかが好きなんかと……」
ユキとバチリと目が合って、ダーシンが目を逸らした。
「あー、あのお芝居ね。エレノワ様から聞いたわ……ハハ。あれ実話じゃないからね? フィクションだからね?」
「……すんません」
「やだ、ダーシンが謝る必要無いんだって」
ユキが笑いかける。
「……で、何の話してたっけ?」
「お姉さんが住んどるいう……」
「ああ、そうだった。大阪について話してたんだった」
二人が話し込んでいると、ダーシンが馬車の方から呼ばれた。
「あっ! ごめんね。片づけの途中だったよね」
邪魔をしてしまったと思い、ユキがいそいそと立ち上がる。
「かましません。帰るだけですから」
ダーシンがニカッと笑った。
「私も戻るね。なんか……ダーシンと話せて良かった。やっぱりホッとしちゃうな。その言葉聞いてると、凄く胸がギュッてなるよ」
ダーシンが微笑む。
「いつでもどうぞ」
ユキも微笑んだ。
別荘に向かって歩き出したユキは、振り返ってダーシンに叫んだ。
「また宮殿でね!」
ユキが手を振ると、ダーシンは一瞬躊躇したものの、小さく手を振り頭を下げた。
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