3. 秘密

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 ヒシグを始め、使節団にとっては皇太子であるアルスとベルサドの王女との縁談がどうしてまとまらなかったのかは、周知の事実であった。  それは「ユキを妃にする」というアルスの意向が、全面的に通ったからだ。 「月の女神」の引き渡しでは本末転倒である。  ベルサド側にはそのような事情は通じていないはずだった。  王の娘との縁談の話すら、水面下で行われていたものであり、公にされる段階ですら無かったのだ。    それは単純に「女神」という世界の宝を得ようとする思惑だったのかもしれない。  しかしこのベルサドの要求を、使節団はその場で拒否し代替案を求める事にしたのだ。    国に戻ってもこのような要求が通るはずがないからである。    サマルディア皇国としては、わざわざ小国のベルサドに使節団を送り、譲歩しているのだ。  同盟条件は時を待たずにすぐ代替案を提示されていた。  そして使節団はその条件を検討するべく国に持ち帰っていた。
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