3. 秘密

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 確かに時間は掛かっていますよ。  書き写すといっても、専門用語は難しいし、サマルディアの言葉でどこまで表現していい物かわからない部分も多いのだ。  わからない所はヒリク先生に相談しながら書き進めている。 「でもベルサドの言葉が本当に私にわかるのかな? エレノワ様の所で、ベルサドの人と話した事はあるのだけれど、どんな言葉なのかはわからないわ」 「こちらにはございませんが、ベルサド語の本や辞書も大宮殿の書庫にはございます。……ですが今日は悔しいのでお持ちしませんでした」  ググンが苦虫をつぶしたような顔をしている。  本当に悔しいらしい。  笑っちゃいけないのに、ユキには可笑しくて仕方がない。 「心配しなくても、ベルサド語で書いたら、サマルディア語の〈女神の書〉の続きは書くから」    ユキは堪えきれずに笑った。 「笑い事ではございませんよ! せっかく我が国に女神が降臨したのに。なぜベルサドなどに先を越されなければならないのか!」  ググンは握りこぶしで机を叩いた。    さすがに女神マニアはご立腹だよね。  と怒られないように、ユキは笑いを必死でかみ殺した。  
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