朝。教室で。

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その日、日本中に激震が走った。 それはここ、神奈川の片隅にある伝統ある女子高のとある教室でも同じだった。 「ねー、テレビ見た?!」 それはもうこの日は挨拶の回数以上に口にされた言葉かもしれなかった。 「見た見た!ショックー!」 「ねー、あり得ないよね!」 「信じられないし、信じたくないよー」 「まさか、祐也が……」 「言わないでー。泣けてくるから!」 そう言って瞳を潤ませる少女。 その隣でかなえは呆然と級友たちの言葉を耳の奥に流すことしかできなかった。 かなえ、かなえ大丈夫? 肩を揺すられて美香は何度か瞬きをした後胸のあたりで綺麗に切りそろえられた髪をわずかに揺らした。 日本に走った激震。 いや、日本芸能界に走った激震は大物アイドルの結婚発表だった。 アイドルなのに女性絡みのスキャンダルが多い。異色、とも呼べる椎橋祐也はしかし、数多いスキャンダルに比例するかのように何故か女性からの指示も高かった。 しかも。 「相手お笑いの人でしょ?」 「だよー!せめて美人女優とかにして欲しかったー」 「しかも年上!」 少女たちは教室に入るとそれぞれ仲良しグループに分かれて朝の情報番組で知り得た、多分誰もが知っているであろう情報を交換しあっていた。
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