朝。教室で。

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大手事務所に所属する、日本で一番コンサートチケットを入手しづらい言われているグループ。そのグループで一番人気の椎橋裕也は、皮肉なことにアイドルらしさがない。と言うことでアイドルに興味がない層からも指示されていた。 そして。 そんな裕也の相手は番組で共演しているお笑いタレント。 年上。と嘆く少女もいたが、1歳しか違わない。たった1歳、けれど年齢で学年が区切られる彼女たちに取っては1歳の違いは大きな違いだったのだ。 「あぁ、しょっくー」 誰かが言う。 「ねー。別に裕也と付き合えるなんて思ってないけどさ」 と、誰かが言うと、当たり前でしょー。と力のない揶揄いの声が上がる。 そんな、1色に染まった朝の教室に異質な色が一滴混ざり込んだ。 ……白木ゆり。 名は体を表すと言うのか、抜けるように白い、むしろ日に当たったことがあるのか疑問に思うほど青白い肌の少女は空いたままだった教室前方の扉から入ってくると教室内を軽く見回して、そしてわずかに目を細めると迷いなくかなえの席に近づいた。 自席に座るかなえ。 前の席で後ろ向きに椅子に座る級友と、その周りを取り囲む3人の少女。 彼女たちはもちろん、クラスにいた全ての少女の視線がゆりに向かった。 クーラーのスイッチが入るのは始業時間になってから。始業時間前のこの時間は、開け放たれた窓からまだ熱い9月の風が緩く入ってきていた。 「今日、暇?」 朝の挨拶もなく。 何の呼びかけもなく。 ゆりはかなえを見つめてそう言った。 「チケット、余っちゃって困ってるの。放課後付き合って」 「え……」 かなえが何も反応出来ないでいるうちにゆりはさっさと自分の席へついた。 2人の様子を見守っていた少女たちも起こった事象を上手く飲み込めないでいる。 背中に、背中と言わず全身に浴びせられる怪訝な視線を何とも思わないのか、ゆりは机の横にかけた鞄の中からノートを取り出し、何事かを熱心に書き込み始めた。 「ね、なにあれ……」 かなえの前に座る美香が首を傾げる。 「わからない……」 かなえがやっとのことで唇を動かした時、始業のチャイムが鳴り担任が挨拶とともに教室に入ってきた。
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