昼。彼女。

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昼。彼女。

板書をノートに機械的に書き写しながらかなえの頭の中では疑問がぐるぐると渦巻いていた。 何故。どうして。何があったの。行くってどこ。チケットってなんの? 当然、教師の声が頭に入ってくることはない。 一番の謎は何故自分なのかだ。 ゆりと特別に親しいと言うことはない。 仲が悪いと言うこともない。 単なるクラスメートであってそれ以下でもそれ以上でもない。 挨拶はする。 授業で同じ班になったことは何回かあってその時は極ごく普通に会話をしたが、それでも事務的なものだけだった気がする。去年も同じクラスだったけれど。でも同じクラスだった級友は他にもいるし……。 かなえは机の上に立てた教科書の陰に隠れて、斜め後ろの席のゆりを盗み見た。 血の気のない青白い肌。 黒めがちな瞳と、胸の辺りで切りそろえられた、定規で引いたかのようにまっすぐな黒髪。 黒髪。 そう言えば、後ろ姿が似てると言われたことが何回かあった。 染めたかのような真っ黒な色と長さが同じだと。 同じ制服、体格も似ているとなれば、そう言うものなのかと思ったのだけれど。 だから? でも、それにしても誘われる理由が……。 少女特有の浮ついた空気を持っていないと言う点に置いてゆりは特殊だった。
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