夜。花火。

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話し込んでいる少女たちはゆりの友人たちのように皆黒い衣服なのかと言うとそうでもなく、カラフルだったり、腕にじゃらじゃらとアクセサリーを付けていたり、サテンのツヤツヤした素材で出来た色違いのセーラー服を着ていたりと様々だった。 そして皆立っていた。 席がないのだ。 チケットに、スタンディング。と記されていたのにかなえはその意味をちゃんと理解していなかった。 スタンディングで椅子がないコンサートが存在しているのは知っていた。 ライブハウスと言う場所があると言うことも。 だが、自分がそこに来るなんて言うことは全く想像していなかったのだ。 「……夜、遅いの大丈夫?」 「え?」 突然の質問。 かなえの戸惑いに気づいたのだろう、ゆりが困ったように首を傾げた。 「そりゃ、無理だよね。ウチとは違うもんね」 ウチとは違う。 その言葉が不意に重く感じて、ゆりの表情を曇らせたことに罪悪感を感じて、そして。 ーー教師と話している時間が長いゆり。やっぱり家に何か事情があるんだ。 そう思ってしまって。 かなえは慌てて強く首を振った。 「そ、そんなことない!」 ーー実際は、そんなことあったのだけれど。 かなえの家は特別厳しい家ではなかった。だが、理由も連絡もなく遅くなることは禁止されていた。 だが、そんなものは普通のことだと思っていた。 思っていたが、きっと、ゆりの家はその、普通。ではないのだ……。 「嘘つかなくても良いよー」 そして、またあの黒猫の笑み。 かなえがホッと息をつくと、ゆりの笑みはさらに深くなって目が糸のようになった。 「ちょっと待ってて」 そう言って、ゆりがずっとつないでいた手を離すと、かなえはその体温を惜しいと思っていた。 離れて行く体温。 その体温の主が誰かにあの笑みを向ける。 ーー私に、もっとあの笑顔を向けてくれたら良いのに……。 ぽつんと取り残されたかなえはゆりの背中を見守ることしか出来なかった。 談笑する少女の輪。 そこに近寄るゆり。 見ているとゆりはその輪の中ではかなり若そうだった。 少女、と言うにはかなり語弊がありそうな、多分、ゆりの知人……。 笑って、何事かを話し、かなえを振り返り指を指すゆりと、その隣で同じようにかなえを振り返り笑顔で手を振る女性。 どうして良いかわからずに曖昧に会釈をすると、2人は輪を離れてかなえの元へ戻ってきた。
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