第二章 平穏

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それぞれが軽く紹介を終えた後、比菜が一華を肘でつつく。 「ちょっとは興味ある振りしなさいよ。あからさまに食べ物しか見てないじゃないの。」 「あ?別に来るだけでいいって、言ったじゃないの。」 それはそうだけど・・・向かいの男子の話にも上の空で「はぁ。そう。」位の生返事ばかりで盛り上がらない。 「一華ちゃんてさ、天然系?」 弁護士を目指しているというイケメンの東野という男が、ワイン片手に一華に話しかけた。 「天然?なにそれ。」 「ほら、そーいうとこ。自覚の無い天然の子って、俺結構好きなんだよねぇ。」 酒に酔った東野は頬を染めて一華に流し目をする。 「・・・キモッ。」 その言葉に周りが固まる。 「気が強いのもいいねぇ。美人はなんでも許されるよねぇ。」 しかし、この男も怯まない。 比菜は内心、このやり取りを面白いと思っていた。普段男と絡むこと無い一華がどう反応するかと窺っていたのだ。 「心の腐りかけた男は嫌いだし、あんたに許されなくても私の人生に何の問題もないんだよ。見た目で判断してる時点で男として終わってる。」 美人が怒ると怖いと言うが、周りが凍りついたのは言うまでもない。 「君、さっきからちょっと失礼じゃないかな。」 東野の隣にいた棚橋という男が、一華に対して怒りを露にし、睨み付けてくる。吉川さんや他のメンバーはおろおろするも、勿論一華は怯まない。それどころか、じっと男性陣を一人一人舐め回す様に見て溜め息をついた。 そうしてから、スッと次々男を指を差し 「あんたは彼女いる。」「あんたは二股。」「あんたは子供を下ろさせてる。」「あんたは・・・」 これにはほろ酔い気分の男性陣達の顔色が赤から青に変わっていくものだから、女性陣はこりゃ、図星かと思わずにはいられなかった。 結局、変な空気のまま合コンは解散、吉川さんに謝った(比菜が)が、あんな男達に引っ掛からなくて良かったわよ、と反対に感謝された。 「ねぇ、あなた。」 店を出て、散り散りになった所で一人の女性に話しかけられた一華は足を止めた。 それが黄河皐月だった。
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