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僕の名前は三日月一哉
某大学二回生、それとなく毎日を過ごし、友達もいて、それなりに充実もしているのだが、何かとトラブルに巻き込まれる事が多い。
まあ、それというのも僕の姉である一華が霊の視える体質(?)だからだ。
元々三日月家に生まれた女性だけに与えられたものらしいが、力の差は個々で違うらしい。
特にうちの亡くなったばあちゃんと、姉はその血を色濃く引き継いでしまったようだ。
そのせいもあり、うちは古本屋を営む傍ら、祓い屋なんて事もしているのだ。
昔から口伝てに広まり、今でも心霊現象で悩んでる人々の窓口になっている。
まあ、僕にはそんな力全くないんだけどね。
でも、姉といると時々怖い思いをする事もあり、少なからず耐性は出来たのではないかと思う今日この頃・・・。
「暇だ。」
大学の授業も終わり、今日は家で店番をしている。
姉は出掛けてくると言ってかれこれ二時間が経とうとしていた。
そこへ、店の磨りガラスに人影が映りこむ。
額に汗を掻いた細身の中年の女性が、勢いよく引き戸を開けて、店に入るなり僕を目掛け突進してきたかと思うと、木箱を押し付ける様に渡してきた。
「助けて・・・これを、預かって下さい、また、来ます!」
「えっ、あの?」
名前を聞く前より早くその人は店を飛び出してしまい、それを追って店の外へと出たが、既にそこに姿はなかった。
「それでこの木箱を預かったと?」
帰ってくるなり箱をみつけた姉はかなり不機嫌だった。
「切羽詰まった感じで、また来ますって。」
「・・・こんなモノ。一哉、仏間に置いてきて。言ってる事が本当なら、また来るだろうし。」
「あ、うん。」
僕が仏間へ箱を持って移動すると、先に居たじいちゃんがギョッとして僕に、いや、僕の持つ箱に目を向けた。
「なんだカズ君その箱は、そんなモンどっから持ってきた。」
そうそう、その箱は縦が50センチ横に30センチ程の大きさで、檜らしき素材、中身はわからないが兎に角軽かった。
僕は事の次第をじいちゃんに伝えたのだが、どーにも苦虫を噛み潰したかのような顔をしてウーンと唸りだした。
「一華がここに置けと言ったなら、仕方ないが、あまり、そりゃ長くは置いておくもんじゃないぞ。」
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