第一章 パンドラの匣

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「うん、なんとなく僕でもそれはわかるんだけどさ。置いてった人がまた来ますと言ってたし・・・勝手に捨てられないよ。」 「まあ、特にカズはこれには近づくな。」 「うん。」 言われなくても得体の知れないものには近づきたくない。 箱を置き、リビングへ戻ると姉がソファーに寝そべりながらテレビを見ているのだが、その様子からあの箱はそれほど危険なモノでもないのではないかと思えてきた。 いつも通りに過ごし、夜遅くに自室のベッドへと入る。 何だか物凄く瞼が重くて、一瞬で眠りについた。 おかしな夢を見ていた。 眠っている自分の体に無数の黒い何かがまとわりついてくる。 体が重い。 「アケテ・・・」「タスケテ・・」 「ダレカ」「アケテ・・・」 カリカリカリカリ・・・・ 引っ掻く音がする。 伸びた爪が何度も何度も何かを引っ掻いている。 「アケテ・・・アケテ・・・クルシイヨ。ツライヨ。タスケテ・・アケテ・・・」 そうだね、苦しいよね、ツラいよね、今僕が助けてあげるよ。 箱の蓋を開ければ、楽になれる。 「フギャアアー!」 鶴の一声ではなく、うちではネコの一声のが正しいかもしれない。 僕はブッチの一声で正気に戻った。 いつの間にか部屋からでて仏間にいて、あの箱を持ち御札の貼られた蓋を開けようとしていた自分に気づいて急いで箱を手放した。 「なんで・・・。ありがとう、ブッチ。」 僕は見えないブッチに礼を言って部屋へふらつきながら戻り、ベッドの端へ腰を下ろした。 じいちゃんが言った通り、あれはヤバイものに違いない。 早くどうにかしてもらわなければ・・・・。 「連絡がきた?」 翌朝、僕は昨日の事もあり今朝は少し遅く目が覚めたのだが、姉が昨日の女性から電話が来たと教えてくれた。 「それで?」 「今日来て、事情を話してくれるそうよ。因みに、ばあちゃんの知り合いの寺の坊主なのよ、昨日来た人はその妻。」 ばあちゃんの知り合いか。 しかし、一体なんであんな箱を・・・。 その疑問はこの後で直ぐに解決する事となる。 欠伸を噛み殺しながら店番をしていると、昨日の女性が申し訳なさそうにおずおずと店の中へと入ってきた。 「昨日は、何も言わずにあの箱を預けてしまって申し訳ありませんでした。」 「あ、いいえ。姉を呼びますので、どうぞ中へ。」
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