第一章 パンドラの匣

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三嶋圭子さんと名乗った奥さんを連れて、あの箱の置いてある仏間へと通すと、先に座っていた姉が待ってましたとばかりに軽く微笑みながらお辞儀をした。 圭子さんは箱を確認するなり、どこか緊張した面持ちで丁寧に挨拶して向かいに腰を下ろした。 「昨日は申し訳ありませんでした。主人が倒れて動揺してしまって。」 「えっ、倒れたって、まさかその箱のせいなんですか?」 口を開こうとした姉に、割り込んでしまった僕を姉はギロリと睨み付けてきた。 「それで、運海さんの容体は?」 「お陰様で原因不明の熱は下がって湿疹も消えてきているみたいです。」 圭子さんの話では、一昨日の朝に寺の入り口である大きな門の辺りにその箱が置かれていた。 誰が何のために置いたのかは分からず、夫の運海さんに手渡すと突然唸りながら倒れてしまい、救急車で運ばれる際「三日月さんの所へ持っていけ」と言われたそうだ。理由もわからず圭子さんはうちへ箱を運んだ後で病院へ向かって、そのまま付きっきりだったそうで、道理で憔悴していたわけだ。 「これは私の推測ですが、箱の持ち主は中身をもて甘して、処分に困りお寺へと持って行けばなんとかなると置いていったんでしょう。まあ、この中身自体あまり良くないモノが入っているようですし・・・」 姉は隣に置いた箱を横目にしながら、話を続ける。 「こちらで処分する形で宜しいですか?」 「はい、出来ましたら御願いします。」 「では、お堂をお借りしたいのですが構いませんか?」 「はい、それは構いません。」 直ぐに話は纏まり、用意が出来たら向かうことを告げて圭子さんには先に戻ってもらう事となった。 「姉さん、どーいう事?」 姉は箱の周りにベタベタ御札を貼りながら、んんっ?と気の無い返事をする。
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