第一章 パンドラの匣

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「一哉、パンドラの匣って知ってるか?」 「あ、開けると禍が溢れるってやつ?」 「簡単過ぎるが、まあ間違いではないか。これはそんな様なもんで、誰かがまずこの箱に禍となる負の魂を閉じ込めた。それを繰り返した結果、箱がその容量を抑えきれなくなり禍が漏れ始めた。恐ろしくなった持ち主はそれを手放した。」 「それって・・・もしかして、姉さんと同じように祓い屋をしてる人ってこと?」 「さあね。何にせよ祓いきれず仕方なく封じ込める事しか出来なかったんだから、大した力の無い奴だろうね。」 祓いきれず閉じ込めて、今度はそれが手に負えなくなって捨てるなんて、無責任過ぎないだろうか。 運海さんだって、その「中身」に影響を受けて倒れてしまったのだから。 「よし、いいかな。一哉、じいちゃんから適当な壺貰ってきて。」 「あ、うん。」 姉はテキパキ必要なものを集めると、全部車へと放り込み、僕は箱を抱き締めながら助手席へと座った。 「これ、どーするの?」 「処分する。」 どういうわけか、今日は毎回信号に足止めされている。 「忌々しい。んな邪魔したって、無駄な足掻きだっつーの。」 フフンと鼻で嗤う姉は、箱と会話してるようだった。 暫く車を走らせていると、とても立派な寺院が見えてきた。 「あそこ?」 「そう。ばあちゃんに連れられてあんたも私も一度来てるのよ。」 そうは言われても記憶がないという事は、かなり幼い頃の話だろうな。 駐車場へ車を停め中へ入ると、圭子さんが飛んできて、お堂へと案内してくれた。 本堂は広くて大きな金色の仏像が置いてあり、天蓋も金色の装飾によって施され立派な造りだった。 そこで姉は箱を置き、その隣に持ってきた壺を置いた。 箱の周りを麻の紐で囲むと、塩を四つ角に盛り、僕には壺の蓋を持っていろと指示を出した。 「さて、と。私が合図したら、あんたは壺の蓋を開けなさい、いいわね。」 「うん、わかった。」 何が行われるのかわからぬまま、言われた通りの位置につく。 姉はいつも使っている数珠を鳴らしながら、経を唱え出す。 そこまではいつも見ている光景だった。それが、時間が経つにつれ、箱がガタガタ震えだしたのだ。 ガタガタガタガタガタガタ・・・。 カリカリ・・・・カリカリ。
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