第一章 パンドラの匣

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「これでもう安心だね。」 帰りの車中、スッキリした顔でそう口にすると、姉は複雑な表情を浮かべた。 「今回はあれで済んだけど、元持ち主がまた同じ事を繰り返さなければいいけどな。」 確かに、あんなものを毎回捨てていくようになったら、大変だ。 「でも、相手はわからないし・・・あ、防犯カメラ着けたらどうかな。」 「それもありだな。圭子さんに言っておこう。でも、ま、少し仕掛けておいたから、また来ればわかるはずだ。」 「・・・・何を仕掛けたの?」 「さあね。」 ニヤニヤ笑う姉の横で僕は口を曲げるのだった。 それから数ヶ月が経った頃、また箱を置こうとした犯人を捕まえたそうだ。 防犯カメラもそうだが、どうやらブッチを用心棒として行かせ、犯人が来た時に脅かしてやったのだという。 犯人は驚き箱を持って逃げたが、その途中で転んだ拍子に箱が開き、中身に取り憑かれたのか、はたまた自業自得とでも言うのか、車道に飛び出して車に轢かれたそうだ。命に別状なかったものの、これに懲りて二度とやらないと誓ったそうな。 その犯人というのは、カメラの映像から、近くに住む自称霊能力者、らしいが、姉曰く三流もいいとこだ・・・そうです。 相変わらず人、いや、猫使いの荒い姉にブッチも辟易していることだろう。僕としてはとても助かっているんだけどね。 今度ブッチの好きなものをお供えするとしよう。 パンドラの匣の最後には希望が残されていたけど、あの箱の中には絶望しかなかった。 絶対に開けてはならない恐ろしいモノ。 僕は時々夢を見る。 海に沈めたあの壺が、鎖が外れてプカプカ大海原を漂って、辿り着いた先の海辺で、気づいた誰かがその蓋を開ける。 そこで目が覚める。 どうか、現実ではありませんようにと心の中で願うばかりである。
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