第1話 生死の狭間

3/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 戦いは厳しさを増している。いくら超人的な回復力を持っているからと言って、不死身ではないし、高い回復能力も無限ではない。あいつの基本性能はずば抜けているし、僕の治癒能力も同等のヒーラーに出会うことはまずない。しかし不死身の戦士などいないし、死者を生き返らせるヒーラーもいない。限界はもうすぐそこまで来ている。戦いの度に――生きて帰ることができた度に、そう思ったのだが、次の戦いのときにはさらにその上を行くダメージを負ってしまっている。 「不死身を証明するにはできる限り死に近づかなければならない。俺たちはそれを実践するためにこの星にやってきたわけではないが、本人たちがどう思おうとも、結局物事を決めるのは観測者だからな」  アルフレッド・ローゼンベルガーは無骨な人間であることは間違いないが、決して戦闘馬鹿というタイプではなかった。やや達観した物の見方をし、誰よりも熱く燃え上がるが、誰よりも炎をクールにコントロールできる。 「いい料理を作るためには、火加減が大事なのさ」  あいつが戦闘を料理のレシピみたいに表現することに最初は戸惑いを感じたし、実際、他人が聴いたら不謹慎だと思うに違いなかった。しかし、戦争などというものは不謹慎をどれだけ真面目にやり切れるのか。それこそレシピに忠実に敵を『料理』することを求められるし、名コックはすなわち、名将や英雄と呼ばれるのである。 「なるほど、確かに治療というのも、ある意味料理みたいなものだからな」  戦闘を料理に例えるのと、治療を料理に例えるのと、どちらがより不敬なのかということについては、僕たちは意見が一致していた。さて、今回の料理のテーマは勇敢なる戦士の活造り――我ながら、罰当たりなことだ。 「お前さんの包丁さばきはいつみてもほれぼれするね。世が世なら料理の鉄人として讃えられただろうな。アイアン・シェフ――ディーノ・カンナヴァーロとかな」
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加