俺の職場の輝く天使

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 電車に乗りやって来たところは美術館だった。大きく屋根の張り出した特徴的な建物だ。 (西園らしいというか) 「今やっている特別展、私の好きな画家さんなんです」 「へぇ」  正直なところ、絵の善し悪しなんて全然分からない。美術の教科書に出てくるような画家ならまだなんとか分かるとは思うのだが、現代アートだというその画家の名前は聞いても少しも響くところは無かった。寧ろ隣の博物館の方がまだ楽しめそうだ。 「本当は一人で来るつもりだったんですけど」  二人分のチケットを買い一枚渡すと「自分の分くらい払います」と財布を取り出す。 「良い。これくらい」 「そうはいきません!」 「じゃあ、今度、仕事を依頼するからそれで返してくれ」  そう言うと、西園は唇をへの字に曲げた。 「仕事なら物で釣らなくても、いつもやってるじゃないですか」 「それもそうだな」  軽く返せば、西園は財布のファスナーを開け始める。 (真面目だな……ったく)
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