1075人が本棚に入れています
本棚に追加
「これは『夏祭り』ですね」
「ああ。それだ!」
記憶の糸が繋がってすっきりとする。懐かしい。女の子のバンドがカバーしていたハズだ。
西園は口元に手を寄せ目を細めた。
「部長もこういう音楽聞いてたんですね」
俺はサンドイッチのかけらを口に放り込み、眉を吊り上げる。
「西園君の私に対するイメージは、いったいどんな男なのかと不安になるな」
「ふふふ。だってスーパードライじゃないですか」
彼女は上目遣いに俺を見上げてきた。口元はいたずらを思いついた子供みたいに緩んでいる。俺はふっと息を吐いて両腕を組んだ。
「まあ、良いか。それが俺の狙いなんだし」
西園は両手でコーヒーカップを挟むように持つ。そして面白そうに三日月の目を作った。
「また俺って言った……」
小さな肩が小刻みに揺れている。
「良いだろう? 今はプライベートなんだ。西園君も役職呼びは止めてくれ。折角の休日なのに仕事っぽさが抜けない」
彼女はコーヒーカップを持ち上げ、口元を隠しながらこちらを見た。
「じゃあ、部長も西園君は止めてくれますか?」
意外な交換条件に、俺はこほんと咳払いをする。
最初のコメントを投稿しよう!