1081人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「いつが良い?」
「私だったら、ぶ……近藤さんに合わせられますよ。何なら今日だって」
「今日!?」
思いがけない提案に短く叫ぶと、西園は目を丸めあわあわと口を開く。
「お忙しいですよね! すみません。私が暇だったものでつい」
白い頬がだんだんと赤く染まる。
「いや。俺も暇だ」
「!」
「だが……車が無い。今日は電車で来たんだ」
駐車場探しを面倒臭がった朝の自分を呪った。
(違うな。車で来ていたら西園に会えていなかっただろう)
正面の彼女はまた鎖を弄り始める。浮き出た鎖骨に吸い付くように鎖が流れた。
「待てる時間があるのなら、車を取ってくるが」
「そんな! 申し訳ないです。だったらタクシーでも」
「いや、タクシーを使う程の店ではないだろう」
佐々木が思いっきりくしゃみでもしそうなことを言うと、西園は「お友達のお店なのに」と笑う。
「どのみち、今から行ってもまだ開いていない。ランチからだからな、あの店は」
俺は腕時計に視線を落とす。まだ九時にもなっていない。
最初のコメントを投稿しよう!