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「近藤さん」
西園が授業中に挙手するように、右手を顔の横まで持ち上げた。名字で呼ばれると何だかこそばゆい。
(これが名前だったら……)
「何だ?」
「今日は電車で行けるところに行きませんか? もちろん、宜しければ、ですけれど」
そう言って白い歯を見せ、はにかんだ。どきり、と心臓が音を立てる。屋根の下は日陰なはずなのに、彼女の背中に明るい光が見える。
「西園が良ければ」
「じゃあ決まりです!」
西園は目を細めた。くるりとカールしたまつ毛と薄いピンクのアイシャドウ。
俺はグラスに手を伸ばした。しかし、ストローがくるくると回転して上手く咥えられない。
「場所は私が決めても良いですか? 行きたいところがあるんです」
ああと頷けば、彼女はスマホを取り出して何かを検索し始める。
白い肌。桃色の頬。揺れるピアス。鎖骨のくぼみに胸の膨らみ……。
シュウゥゥゥゥ……。
ミストが背中を襲った。
「…………」
落ち着け、俺。
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