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「分かったから」
「!!」
財布ごと西園の手を掴んだ。細い手首にはシルバーの腕時計。
真ん丸く目を丸める彼女に、俺はゆっくりと口を開く。
「分かったから。じゃあ、こうしよう」
手を掴んだまま茶色く透き通る瞳を見つめた。
「西園の今日一日を俺にくれ」
西園はふわぁと言葉にならない音を発した後、ふらりと視線を泳がせた。俺は掴んだ手を揺らし、逃げていく西園を引き戻す。ブラウスのフリルがひらひらと揺れた。
「駄目か?」
くるりとカールしたまつ毛に縁取られた瞳が、ゆっくりと俺のそれに戻ってくる。
「西園……」
手が熱い。俺の熱がどんどんと西園に流れ込んでいく。
「……駄目じゃ……ない……です」
ピンク色の唇が消え入りそうな小さな声を紡ぐ。
「西ぞ……」
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