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「こほんっ!」
入り口に立つ警備員がわざとらしく咳払いをした。はっと顔を上げ周囲を見回すと、受付の女性もチケットをもぎる係の人間もニヤニヤと口元を緩めながら俺たちを見ている。
(うわ! しまった)
俺はチケットを持つ手で眼鏡のブリッジを押し上げた。
「行くぞ、西園」
掴んだ手をそのまま引っ張って、展示室へ向かう。
「おはようございます。ごゆっくり」
美術館員の言葉に笑いが滲んでいるのは、俺の気のせいということにしておこう。
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