俺の職場の輝く天使

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 二時間かけて一周し、美術館併設のレストランにやって来た。大きな窓ガラスの向こうには手入れの行き届いた中庭が見える。木々の影が芝生に色濃く落ちていた。一歩外に出れば室内との温度差に悲鳴を上げることになるだろう。 「面白かったか?」  西園は売店で画集まで購入し、ホクホクと満足気な笑顔を見せていた。 「はいっ! あの真ん中辺りにあった青い大きな絵。あれが見たかったんです」 「青い……」  申し訳ないがどれもこれも同じような絵に見えて、真ん中の青い絵と言われてもさっぱり思い出せない。腕を組んで首を捻ると、西園はビニール袋から画集を取り出し、パラパラとページを捲って俺に見せた。 「この絵です。タイトルは『海』っていうんです」  真っ青な地の右下の方に緑色の幾何学模様が描かれている。 (どこをどう見たら海なんだ? 青いから? じゃあこの緑は?) 「…………」  無言でその絵を眺めていたが、パタンと画集が閉じられた。ゆっくりと視線を持ち上げれば、正面の顔は眉間にシワを寄せている。
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