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「んもう、近藤さんってば。全然覚えて無いんでしょう?」
尖る唇に向かって、正直に「すまない」と返事をした。すると彼女は眉尻を下げる。
「楽しめませんでした? ごめんなさい。私が無理矢理引っ張ってきちゃったから……」
「そんなことはない!」
寂しげに視線を落とした西園に、思わず声を張り上げた。再び周囲の注目を集めてしまい首を竦める。西園はぱちぱちと目を瞬かせた。
俺はテーブルの上で手を組み、声を落として言う。
「俺が美術に明るくないだけだ」
「それなら……」
「西園と一緒ならどこだって楽しいさ」
「こ……!」
俺の所為で寂しげな顔はさせたくない。けれどそんな俺の意図とは裏腹に、西園は益々顔を俯かせていった。
「西園もそう思ってくれると嬉しいんだが……」
(そうもいかないか)
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