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コーヒーが運ばれてくる。西園はケーキ付きだ。ランチ前だが女子特有の『甘い物は別腹』というやつなのだろう。
眼鏡のブリッジを押し上げ、カップに手を伸ばす。向かいのテーブルから笑い声が聞こえてきた。
「……近藤さんって良く……」
西園が漸く口を開いた。
「良く?」
「……やっぱり、何でもありません」
「途中まで言いかけて止めるな。気になる」
西園はフォークを取り、ふわりと目を細めた。
「内緒です」
にっこりと形作られる三日月の瞳。
(まただ)
職場で会う彼女と違い、今日はころころと良く笑う。そして彼女にだけスポットライトが当たっているかのように、眩しく輝くのだ。
(後光が……さしているのか?)
馬鹿げた想像に、こほんと咳払いをする。
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