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手を伸ばし、フォークを持つ彼女の手首を掴んで引き寄せる。
「ちょっ……」
慌てる西園を無視して、俺はぱくりとそのフォークを咥えた。
「……っ!!」
口の中にクリームが広がる。
(美味しいっていうか……)
手首を掴んだまま西園の表情を伺えば、面白いくらい真っ赤な顔をして俺の顔を見つめていた。
「甘過ぎ……」
フォークを外しペロリと舌なめずりをすると、西園は慌ててフォークを持つ手を引っ込めた。パールのぶら下がるピアスが揺れる。
「ケッ……ケーキはこれくらいがちょうど良いんです」
彼女は左手で自分の手首を握りしめていた。俺が掴めば簡単に指が一周する白く細い手首。
「そうなのか? 甘過ぎだと思うが」
「それは近藤さんが…………だから」
西園は俯いてぽつりと呟いた。
「え?」
「……なんでもありません」
俺は両手を組んで片眉を吊り上げた。
「また、俺がスーパードライだからって言うんだろう?」
ニヤリと唇の端を持ち上げる。狼狽える姿が小動物みたいで、ついからかいたくなるのだ。
(また内緒って言うかな?)
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