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「何を忘れるんですか?」
人懐っこい西園が、佐々木の話に入ってくる。
「西園ちゃんがこいつのことをね、忘れたんじゃないかーって心配してたの」
「おい! 余計なこと言うな」
佐々木が至近距離でカカカと笑いながら、俺の頭をベシベシと叩いた。佐々木は一つひとつの動作が強力で、よくもまあ料理なんて繊細なことができるもんだと毎回関心する。
西園は唇に人差し指を当て、俺たちの顔を覗き込んだ。
「私が近藤さんのことを? ……何言ってるんですか。忘れる訳ないじゃないですか」
さも当然と返した台詞に、俺はピクリと眉毛を動かした。佐々木は面白がって「そう?」と聞き返す。
「いっつも内線で呼び出しては急ぎの仕事を振ってくるんですよ。……こんな恐い顔をして」
そう言って眉毛を吊り上げて、中指で眼鏡を押さえる真似をする。
(俺のイメージって……)
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