俺の職場の輝く天使

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(まだ朝早いのにもう暑いな……)  電車に乗って会社の最寄り駅で降りる。駐車場探しが面倒なので自動車は置いてきた。 (休日くらい、会社から離れれば良いのに)  苦笑しながら歩く。いつからこんな面白味のない人間になってしまったのだろう。大学生の頃はもう少し楽しい毎日を過ごしていたはずなのに。スーパードライだなんて呼ばれて身も心もその通りになってしまったのか。  ジーワジーワと蝉の合唱が響いている。気付けばあの公園にやって来ていた。  公園をぐるりと一周するアスファルトの道の脇、ぽつぽつと点在するベンチに視線を送りながら当てもなく歩く。散歩途中の老夫婦、タブレットを弄る若者、大きなリュックを背負った外国人旅行客。 (流石に休日には居ないか)  肩くらいの黒髪を見つけては視線を止める。  ――西園ちゃんお前のこと忘れちゃうんじゃない?  前髪を掻き上げた。こめかみを一筋の汗が伝う。 (どうしろって言うんだ、佐々木)  頭に浮かんだ親友の日焼け顔に不満をぶつけ、そのまま公園を通り抜けた。
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