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アイスコーヒーとアボカドサンドの乗ったトレイを受け取り、彼女の元に戻る。
「あ、それ、美味しいんですよ」
西園は俺のトレイを覗き込んで目を輝かせた。
「……食べるか?」
「いえっ! そんなつもりじゃっ!」
赤い顔をして両手を振る姿に笑いがこみ上げる。すると西園は俯いて、上目遣いに俺を睨み付けてきた。
「部長こそ私のイメージがおかしくないですか?」
「いたって普通だと思うが」
「そうですか?」
西園はぶつぶつ言いながら唇を尖らせている。俺は口元を拳で押さえながら言った。
「ここには良く来るのか?」
顔を上げ、右手でネックレスの鎖を弄る。綺麗に整えられた爪は桜貝みたいな淡いピンク色。
「最近は。公園は流石に暑くって」
「今日みたいな休みの日も?」
「…………ええと。最近は」
「自炊はしないのか?」
すると西園は困ったように眉尻を下げた。
「部長、質問責めですね」
「あ! すまない。そんなつもりは無かったんだが」
「良いですよ。応えられることなら応えます」
そう言ってふふふと笑いながら鎖を弄っている。彼女の癖なのかもしれない。
俺はアイスコーヒーを一口飲んだ。喉の奥に香ばしい苦みが広がる。
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