俺の職場の輝く天使

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「いつが良い?」 「私だったら、ぶ……近藤さんに合わせられますよ。何なら今日だって」 「今日!?」  思いがけない提案に短く叫ぶと、西園は目を丸めあわあわと口を開く。 「お忙しいですよね! すみません。私が暇だったものでつい」  白い頬がだんだんと赤く染まる。 「いや。俺も暇だ」 「!」 「だが……(あし)が無い。今日は電車で来たんだ」  駐車場探しを面倒臭がった朝の自分を呪った。 (違うな。車で来ていたら西園に会えていなかっただろう)  正面の彼女はまた鎖を弄り始める。浮き出た鎖骨に吸い付くように鎖が流れた。 「待てる時間があるのなら、車を取ってくるが」 「そんな! 申し訳ないです。だったらタクシーでも」 「いや、タクシーを使う程の店ではないだろう」  佐々木が思いっきりくしゃみでもしそうなことを言うと、西園は「お友達のお店なのに」と笑う。 「どのみち、今から行ってもまだ開いていない。ランチからだからな、あの店は」  俺は腕時計に視線を落とす。まだ九時にもなっていない。
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