小説家

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それからは秋田で執筆活動をして、原稿がまとまったら東京の秋吉出版にその原稿を送り、校正や編集をして貰い、月に何度か東京に足を運んで打ち合わせを行う。そんな生活が続いた。今までの人生の中で一番大変で、幸せな一年間だった。 「ありがとうございます 。 鈴木さんのお陰です 」 僕は深々と頭を下げた。鈴木さんがいなかったら僕の作家デビューの夢は叶わなかった。実際、鈴木さんは見た目こそ冴えないが、編集の腕は確かだ。 事実、この一年間で鈴木さんは編集長にまで登りつめたのだ。その恩恵かどうか分からないが、編集長に一目置かれている作家として僕の処女作を期待している人は多い。ありがたい事だか相当なプレッシャーだ。 「いえ、 村上さんの頑張りでここまでの作品が出来たんです 、絶対に売れますよ。 ところで、 ご友人やご家族の方にはもう伝えているんですか? 」 ちなみに僕は、小説を本名で出版しようとはしていない。ペンネームを使っている。由来は尊敬している作家の方の名前からきている。なので、小説が出版されても家族や友達は僕が出版したことに気づかない。自分から言わなければ誰も気づかないのだ。
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