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「…………」
寒い空気に包まれた、三月の夜。春の訪れはまだ遠そう。
人もまばらな、海沿いの公園。そこに一人で訪れていた。時折吹く海風が一層寒さを感じさせる。
……気付けばもう、二十代後半。立派とは言い難いがどうにか社会にも溶け込むことが出来た。
あの時沸き上がった正体不明の感情。その後長年に渡って封印してしまっていた。
当時はあまりにも自分に自信がなく、再会を望んでも叶う可能性は低い。
運よく会えたとして気味悪がられる可能性大。
不可解なものに苦しめられるくらいならばいっそ閉じ込めてしまえと心の奥深くまで追いやったのだ。
中学卒業後は無理やりだが見た目が変化し、環境も変化。人も自然と寄ってくる。
感情豊かではなかったが、充実した人生……たった一つのことを除いては。
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