〈屋上〉

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〈屋上〉

「柚木(ユズキ)せんぱ~い?」 誰もいない、屋上。 決して入ってはならないように、ドアには立入禁止の紙が貼られてある。 そんな事はお構いなしに立ち寄った、いつもの屋上。 そして私は先輩の名を呼ぶ。 「あ、……見つけた」 暑い炎天下のから日差しを遮るかのように、建物の陰に彼の姿を発見した。 「先輩っ、今日も好きです」 「…… 」 「先輩? 聞いてます?」 駆け寄るも、先輩は仰向けに寝そべったまま目を閉じている。 パチっと目を開いたかと思えば、わかりやすく怠そうに声を発した。 「……あと一歩。 前に出て?」 ん?と頭にハテナマークが浮かんだが、その答えはすぐにわかった。 「パンツ、見えそう」 「っ!? もう 先輩のバカ!」 いつもこんな感じ。 そう、いつもだ。 結局、はぐらかされて終わるのはわかっている。 けれど私がここに通い続ける理由。 それは、まだ入学して間もない頃の話。
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