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俺はテーブルに戻ってロクと相対(あいたい)する。
スマホは耳から離し、画面をロクに見せた。
マッチングアプリの画面をロクは見ている。
それから自分のスマホを見て、目を見開いたまま画面を俺に見せた。
同じ、マッチングアプリの画面を。
「……ひひっ、なんやその顏」
「は……ハチ?」
「うん。俺。初めまして」
「初めましてて……は、初めまして?」
もう底をつきそうなジンジャーエールのストローを咥えて俺は笑う。
ロクもまだ半分残るコーラのストローを抜いて、一気に飲み干した。
「……え、夢?」
刺激に耐えている顏の癖によく言う。
そんな俺も、刺激に耐えた。
嬉しいのとか、そういう、甘い刺激みたいなものを。
そして俺は初めて会った――合った、ロクにこう言った。
「……失恋させんなよ?」
そしてロクは強がった気で、こう返したのだった。
「……はっ、見くびんなよ。俺、好いとぅ奴には引くくらいべたべた甘ぇから覚悟しとけ!」
――上等!
と、俺は空になったジンジャーエールの瓶をロクの空になったコーラの瓶に、がちん、と当てたのだった。
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