大嫌いな彼と僕の7days

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1、 奇跡的に崩れていなかった鉄塔を登り、松田開里(まつだかいり)は壊滅した街を見下ろした。 今日は空が高く晴れていて、雲ひとつない青空だ。わが街が壊滅した時でなければ、さぞ気持ちが良かった事だろう。 「誰も、いないか。」 眼下に人陰はなく、見えるのは崩れたコンクリートばかりだった。この地域で生き残ったのは開里だけかもしれない。 テレビもインターネットも生きてないので、他の場所の情報が一切ないので正しい事は分からないが、どこも同じような状態なのではないだろうか。 隕石が降ってきてから3日が経つが、未だ救助の姿はないのだから。 ―――死ぬのだろうな。 ひとりで生きられる筈がない。今、この手を離しさえすれば、簡単に死ねるだろう。 それでいいか―――とも、思った。 生にしがみついて苦しい思いをするより、このまま飛び降りてしまう方が。 「―――ぃ」 人の声が聞こえた気がして、開里はハッとなった。視線を崩れたコンクリートから、鉄塔の足元まで下げる。すると、地上に黄色い人の姿があった。 真上にいる開里に手を振りながら、その黄色い人はピョンピョンと跳ねている。 生きている人だ。 ―――え?あれは、 生存者の姿に浮上しかけた気持ちだったが、相手が誰か分かり開里は目を見開いた。 「よりによって―――」 派手な黄色い服を着た日下大地(くさかだいち)を、開里は絶望的な気分で見下ろした。
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