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現在、二人は福岡にいて、北九州を目指している。とうとうママチャリが壊れてしまい、使えそうな自転車も見つからず、今日の夕方は徒歩での移動を余儀なくされた。
ずっと海沿いを歩いて来たので、体が塩でベタついている気がする。
「開里、海、入ろうぜ。」
「は?」
「汗流して、サッパリしたい。ほら、立てよ。」
「余計にベタベタする気が。」
開里は腕を掴まれたと思うと、日下に強制的に海へ突き落とされた。
ドボンッ―――と、静かな夜の海に水音が響き、一気に騒がしくなる。
「ひっ!」
「おっ、冷てえ!」
ほぼ同時に海へ飛び込んだ日下が、楽しそうな声を上げる。
いつでも陽気な男だ。こんな状況だというのに、無理に強がっている様子はなく、純粋に楽しんでいるように見える。足手まといの開里を連れて行くには、大変な労力だろうに愚痴ひとつ言わない。
敵わないなぁ―――と、思う。
「開里、空、すげぇぞ」
日下が海に浮かびながら、空を指差して言う。
それ習って開里は海面にぷかりと浮かぶと、星空の天井が広がっていた。残念な事に星座にはあまり詳しくない。
―――気持ちがいい。
音の遮断された世界で、見えるのは満天の星だけ。壊れた街も、隣にいる日下も今は見えない。
静かな夜があまりに綺麗で、気が抜けたのか開里はちょっとだけ泣けてきた。
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