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「君は本当に僕の観察日記に興味を示してくれた。君の存在を把握したのは二人目を殺めた時かな?
僕の事を、その時はまだ事件自体の事だけど調べていると知ってね。その時思ったんだ。彼を観察したいってね。」
青年の背筋を悪寒が通り過ぎる。
「ならばどうしよう、彼に僕の事をもう少し知ってもらって多少なりとも近く距離を縮めてから観察したい、そう思ってね。」
「…お前まさか」
「そう、その時目をつけたのが君の妹、御手洗 麻美さんだよ。」
青年 御手洗昭一は気付いてしまった。妹が誰のトリガーとなっていたか。それは自分の内に秘めたものを開けるものだと思っていた。しかし実際は〝これから起こる悲劇への布石〟だった。
「妹を殺されれば彼は怒るだろう。絶え間ない憤怒と恨みを此方へ向けてくるだろう。果たして実際はどうだろうか、見事読みは的中だ。」
「なんでだよ!
なんでそんな事の為に妹を…!」
「いいよ、いいよその顔。もっと見せてくれ、此方へ向けてくれ…!」
涙とともに流れる怒り。悲劇が起こる、未来での恨み。
「観察場所をここにした理由も教えてやろう!
君はおそらく計画的に、妹と同じやり方で俺を殺してやろうと思う筈、ならば彼が殺しに来たところを、此方がいつも通り手にかけよう…。」
「そんな事出来る訳ない!
なぜならここは…。」
「…!」
「なぜならここは…自分の部屋、かな?」
違う、今更気付いた。物の配置や、部屋の雰囲気、何から何まで違うにも関わらず、ここが自分の部屋だと思い込んでいた。
「なぜ気付かなかったのか、それも此方の誘導だよ。」
「なんだと…?」
「君はその類い稀な捜査力から、妹を殺した犯人を予測していた。そんな折、偶然道端で俺を見かけた。君は俺の後を着け、自宅の場所を把握する。そして、頃合いを見て、犯行に及んだ。」
(そうだ、計画は順調だった。なのになぜ…!)
「しかし、それ自体が誘導だった…!
俺はわざと君の側を通り、家を把握させた。そして君の気を失わせ自ら組み立てた檻へと入り、事件を録画した映像をセットして眠った。」
「……!」
「君が部屋の鍵の場所を知らなくて当然なんだ。…元々僕の家だからね。」
全てを明かされ無に還る青年。もはや言葉も見つからない。
「…さて、そろそろいいかな。君の事も充分観察した。後は死ぬまでの経過を見るのみだ。」
身動き一つしない青年へと近づく
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