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「なんで俺をこんな檻にぶち込んで、足枷まで付けたんだって聞いてんだよ!」
青年の人を小馬鹿にした様な振る舞いに、遂に声を荒げ怒りを露わにした男。すると青年は先程までの振る舞いと打って変わり冷静となり、言葉を返す。
「人が檻に入れられて、足枷まで付けられる理由なんて限られてるでしょ?」
「んだとぉ…?」
「人が檻に入れられる。それは様々な要因があれど、理由は二つ。
危険な人物だと判断され、身を拘束されたまたは、もう既に罪を犯し、自由の身では無くなった…。」
「危険な人物…。自由の身では無い…?」
「さて貴方は、一体どちらかな?」
「ふ、ふざけんな!
檻に入れられるような事してねぇよ俺は」
「…へぇ、そうなんだ。」
男の答えを聞いて、興味を無くしたかのような呆れを見せる青年。
青年は、奥にある据え置きの机の椅子を手で引き寄せ、背もたれを前にして座る。そしてリモコンを取り出し、テレビを付け始めた。
「……」
無言で画面を見つめる青年。
(なんだ…こいつ。急にテレビを、緊張感が無いのか?)
「おいお前!
急になんでテレビなんて…」
「この娘、知ってますか?」
男の言葉を遮る青年の言葉。青年はテレビの画面を指差し問いかける。テレビでは、ニュース番組が流れていた。
「この娘って…これニュース番組だよな?」
「連続通り魔惨殺事件。被害者は皆一人暮らしの方で、その殆どが女性。手口は通り魔にしては陰湿で変質的、家から出たばかりの被害者を刃物で脅し、自宅の部屋まで戻し身体を拘束する。そのまま気を失わせ、拘束具を外した後、足枷を付けて黒い檻へと閉じ込める。そして次の朝には、血塗られた死体となっている。」
「なんだよ…それ。」
「被害に遭った人は特に周りから怨みを買うような人でもなく、極普通の一般人だ。一貫性や共通点も何も無い、なんの関連性もね。通り魔の目的も特にわからず意味もからない。おそらくは快楽殺人の愉快犯。人を殺す事を喜びとしているんだろうね」
「人殺しの好きな、変態かよ…。」
「…この事件の不可解な処は犯人が〝家を出たばかりの被害者を再度部屋へ戻す〟という事なんだ。殺したければその場で殺せばいい、部屋へ戻して犯行に及ぶなんてリスクが高すぎる。」
事件の詳細を饒舌に語る青年。その姿は男から見たら、話に上がる通り魔よりもおそろしかった。根拠は無いが潜在的な、狂気を強く感じ取った。
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