103人が本棚に入れています
本棚に追加
「自分のものには名前書かなきゃだもんな」
「ん?」
「元いたところでは、そういわれるんだ。大事なもの、自分の持ち物には名前を書きましょうって」
「そうなのか?」
「うん」
オレの体の前で組まれた腕に、ぎゅうと抱きつく。
「それは、大事なことを聞いた。じゃあ、俺はルウに自分のものだと印をつけなくちゃいけないな」
あの夏。
オレは生まれた世界を離れて、拾われた。
どうしたらいいのかわからなくて途方に暮れるオレを、ここに連れてきたのはトバ。
どうしたいかと問われて、ここにいることを選んだのはオレ。
大事だといってくれたのは、サファテ。
オレは変わった。
でも、後悔はない。
だってこの変化は、この世界で暮らしていくための、成長だ。
サファテが印をつけてくれたら、きっとオレは落とし物じゃなくなる。
サファテの腕の中で回れ右をして、オレは、ちゅ、とサファテの唇を食んだ。
「呼んで。いっぱい。オレの名前」
<END>
最初のコメントを投稿しよう!