昔のオレは知らなかったはず

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サファテの手で貯水池に投げ込まれて、泡とともに沈む。 水の中から空を見上げた。 ゆらりと揺らぐ水面と差し込む光。 懐かしい。 割と切羽詰まった状況だというのに、ふいに懐かしいだとか、変な話だけど。 子どものころ、夏休みには母方の田舎に行った。 山の中の辺鄙なところで、その辺の子どもたちの夏の遊びといったら、川で泳ぐことくらい。 橋の上から飛び込んでみた景色が、こんな感じだった。 あれ以来の風景。 懐かしくてきれいで、いいものを見た。 ぶくりと水の中で大きく息を吐いて、オレは目を閉じる。
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