完璧男子に類なし school festival

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「・・・た、橘!」 突然、瀬戸に大声で呼ばれる。 思わず足を止めた。 「なに?」 「・・・・・・して」 「あ?」 「・・・っ!」 瀬戸が俺にぶつかるくらいの勢いで近づいてきて、 顔を近づけてくる。 ・・・・・・馬鹿野郎! 「っあ!」 俺が突き飛ばした拍子に、瀬戸の身体はテーブルにぶつかり、地面へと倒れる。 「おい、大丈夫か!せ――」 慌てて瀬戸を起こそうとして近づくと・・・ 「・・・っ、ふ」 「お前・・・・・・どこか打ったのか!どこが痛い?」 「ちが、ち・・・がう」 「じゃあなんで泣いてんだよ!打ったんじゃなくて切れたのか?」 「っ、なんで・・・」 「あ?」 「なんでキス・・・してくれないんだよ!」 瀬戸の、涙ながらの叫び。 それは俺の胸を抉るには、十分だった。 「瀬戸・・・」 「あ、ち、違う!ごめん、違うんだ」 「は?」 「嘘。今の忘れて!そんなこと、思ってないから」 おかしい。 明らかに様子がおかしい。 瀬戸が顔を背けているのが、なによりの証拠だ。 何かを・・・・・・隠してる。 瀬戸を押し倒している形になっているこの体勢。 無理やり犯してでも聞き出すか・・・ 「お、俺の、方が・・・場所、変えるね」 「瀬戸」 「え?」 俺は、瀬戸の身体を起こして、ぎゅっと抱きしめた。 こいつは頑固だから、きっと犯しても口を割らない。 それなら逆に、こっちが口を割ろう。 そうすればきっと・・・瀬戸も話すだろうから。 「・・・ったく、強引に唇奪おうとしてんじゃねーよ。やってること、あの女と同じだぞ」 「・・・・・・たち、ばな」 「あいつとは行きずりでできても、お前とはできねぇんだよ。  だから・・・ちゃんと俺がしたくなるまで、待ってろ」 「でも・・・」 「いいから待ってろって!そ、そんなに・・・遠い未来の話じゃないから」 「・・・・・・・・・」 ぎゅっと抱きしめながら、頭をなでる。 暗いし、顔見えないようにするために抱きしめたから・・・ 少しだけ、素直になれる。 少しだけ、瀬戸を甘やかしたい気になる。
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