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「で?お前はなんでこんなとこで泣いてんの。てかそろそろ昼休み終わる?」
時計を探しているのか、辺りを見回しながら矢継ぎ早に質問されて、どれから答えていいのやら。またも目をぱちくりしながらおろおろしていると、再びぶはっ、という笑い声が聞こえた。
「いや、ごめん、お前…」
「?!」
「お前、おもしろいわ!」
「いっ!?」
バシッと、左手でおれの右の二の腕を叩きながら、くくく、と笑う男前。2、3回叩いて、そのまま支えにするように二の腕を軽く掴まれた。手のひらから伝わる熱が熱い。
目の前では、まだお腹を抱えて笑っている。
「あの、名前…」
「ひー、笑った笑った。あ?名前?」
「…っ、うん…」
おれの腕を掴んだまま、少し前屈みになって笑っていたところから、顔だけを上げて覗き込まれ、一瞬息が詰まった。
下から見上げる格好だと、ボタンを外した襟元から、きれいに浮き出た鎖骨がよく見える。さらに少し大きめのワイシャツのせいで、その先の日に焼けた肌もかすかに見えてしまう。
(へ、平常心平常心…)
ぎゅっと目を瞑って深呼吸。その間に腕にあった手の感触がなくなり、すっと涼しくなる。
なんとなく寂しく感じつつ、ゆっくり目を開けると目の前に男前な顔面があった。
「ぎゃ!!!」
ざっと一歩飛び退いて両手で心臓辺りをぎゅっと掴む。
心臓が飛び出るかと思った…!!
顔に熱が集まっていくのがわかる。バクバクとうるさい鼓動は、しばらく鳴りやみそうにない。
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